UAP14475 のブログⅢ

Yahoo!ブログから引っ越してきました。パソコンとトイガンが大好物です。  暇になると艦これを始めてしまいます。とにかく秘書艦は阿武隈ちゃんで。

東芝 dynabook Satellite WS754/M 分解清掃

どうも熱伝導グリスが固まっている疑惑があるので分解清掃となりました。

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  ↑ 「 東芝 dynabook Satellite WS754/M 」 。アキュポイントキャップは部品がないため取り外し済み。*1


このマシン、法人向けということもあってか分解手順の情報が少ないです。
マニュアル(基本編)の「メモリの増設」にキーボードの外し方までは載っていますが、
ボトムハウジングの取り外し方までは載ってませんでした。

そこで、姉妹機(B654/Kなど)の海外名称 「 A50-A 」 で検索したところ、この動画を発見しました↓

www.youtube.com

WS754(海外名称:W50-A)とA50-Aは、dGPUの有無、DCジャックの形状、ハウジングの加工、くらいしか違わないため、
基本的な分解手順にそう違いはないと思われます。 (当然ながら分解は自己責任になりますが。)



何はともあれ参考になる動画も見つかったので早速分解します。

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  ↑ この状態からスタートします。

なお、各ポート・スロットにデバイスを接続している場合はすべて取り外しておきます。
ボトムハウジングを取り外す際に引っかかって破壊する原因になるため、必ず確認しましょう。
特にSDカードスロットは見落としやすいので要チェックです。

また、分解時にバックアップ電池を外すことでBIOS設定がリセットされるほか、
何らかの理由でバックアップ電池を外さなくともリセットされる可能性もあるため、
BIOS設定についてはメモを取っておくと良いと思います。



■バッテリーパック、HDD、DRAM、スピーカーケーブル、底部ネジ、光学ドライブの取り外し

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まず、感電やショートによる破壊を防ぐためにバッテリーを取り外します。
右のラッチはスプリングのテンションが掛かっているため、右手で保持しつつバッテリーパックを持ち上げます。
取り外した後もバッテリーパックの端子部分には注意しましょう。

次に、HDDとDIMMスロットのカバーを取り外してHDDとDRAMを取り出します。
カバーは2点のネジ留め+ツメによる固定となっており、通常ネジはカバーから分離しないようになっています。
カバーのツメは少し硬いのでケガをしないように注意しましょう。カバーを外したらHDDとDRAMを取り出します。

そして 忘れずに HDD脇のスピーカーケーブルを抜いておきます。(画像左下)

次に底面のネジをすべて外します。ネジの位置は画像左下を参考にしてください。*2
バッテリーパックの裏に隠れている小さなネジが3本あったりするので、絶対に見落とさないようにしましょう。
先ほど外したカバーの裏にもネジが1本隠れています。

最後に光学ドライブを引き抜いて取り外します。
光学ドライブは先ほど底部から外したネジの1本によって固定されているため、必ずネジを外してから取り外すようにします。
ネジを外した状態ならば、それほど力を入れなくとも抜けるはずなのであまりに固い場合は再確認しましょう。



■キーボード、メモリカバーの取り外し

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まず、キーボードの上側にある細長い部品 「 キーボードホルダー 」 を取り外します。
この部品は左上の部分に切り欠きがあるので、ここに先の細いものを差し込んで浮き上がらせて、
右に向かって 折らないように注意しながら 外していきます。(画像中段左)
この部分はマニュアル(基本編)のP.66に記載されています。

次に、キーボードの上辺側にあるツメを端から順に押し込みつつ、キーボードを持ち上げていきます。(画像中段右)
ツメを外すのにそれほど強い力は必要ありませんが、キーボードの裏面に両面テープが貼ってあるので、
必要に応じてキーボード裏に手を差し込み、キーボードが反り返りすぎないようにします。
あまりに大きく反り返ると断線の恐れがあります。

キーボードが浮き上がったら一旦その場でひっくり返して、キーボードとアキュポイントFFCを取り外します。
画像下段左が挿さった状態、画像下段右が抜いた状態です。コネクタやFFCを壊さないように注意。

最後に、金属製で灰色のメモリカバーを取り外します。
メモリカバーはネジ1本で留められており、このネジは通常脱落しないようになっています。



■ボトムハウジングの取り外し

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再びWS754/Mの底面が見えるようにして、ボトムハウジングを取り外します。
光学ドライブが入っていた場所(開口部)から手を入れて、手前側、バッテリー側、最後に排気口側、と分離させていきます。
排気口側を最後にするのはRGBコネクタがあるためで、先に外そうとするとコネクタが引っかかる恐れがあります。
なお、ハウジングは四辺とも多数のツメが存在します。うまく外しましょう。

組み立て時には、最初にRGBコネクタをボトムハウジングに嚙合わせるようにします。
真上からはめ込もうとするとうまく入らない可能性があります。



■冷却ファンの取り外し

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まず、マザーボード右上、冷却ファンの左側にあるディスプレイケーブルを取り外します。(画像右上)
ただし、このコネクタは非常に硬いため、コネクタから生えているプルタブのようなテープを引っ張ると千切れます。*3
どう抜くのが正解なのか正直分からないんですが、ケーブルとコネクタの付け根あたりをやさしく引っ張ると抜けるようです。
たぶんですがLVDSです。4K液晶搭載型はeDPかもしれません。(?)

次に、ファンを取り外します。
ファンは上側2点がネジ留めされていますが、右側のネジは先ほど外したディスプレイケーブルの裏にあるため、
ケーブルをヒンジ近くまで外した状態でないと抜くことができません。また見落としやすいため注意しましょう。(画像左下)
ネジを外したら、ファンを持ち上げつつマザーボードに挿さっている3pinコネクタを抜きます。(画像右下)*4



マザーボードの取り外し

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まず、マザーボードに接続されているケーブルを取り外します。
下辺側にタッチパッド指紋認証センサーのFFCが取り付けられているのでこれを取り外します。(画像2段目)
指紋認証センサーのFFCが挿さっているコネクタはラッチがないタイプです。
力を入れすぎるとFFCが壊れるので注意しましょう。

そして左辺側には、ExpressCardスロットとサブ基板からそれぞれFFCが挿さっているためこれも抜いておきます。
サブ基板用FFCの裏には無線LANモジュールがあるため、完全に取り外してネジを取り外せるようにしておきます。
(画像3段目左、画像4段目)

無線LANモジュールは下側の1点のみネジ留めされているので、ネジを外して無線LANモジュールを引き抜きます。
このコネクタはmSATAのように斜めにするのではなく、まっすぐ抜き差しする仕様のようなので、間違えないようにしましょう。
必要に応じてアンテナ線をハウジングの凹凸から抜いて、断線させないように注意して作業します。

さらに、左側にあるサブ基板からネジ2本を取り外してひっくり返し、右側の小さい方のコネクタを抜いておきます。
するとDCジャックとLANコネクタを外せるようになるので、ケーブルをハウジングの凹凸から外しつつ、
コネクタを自由に動かせる状態にしておきます。*5

次に、マザーボードの上側にあるバックアップ電池を動かせるようにしておきます。
セロハンのカバーをめくり、ケーブルをハウジングの凹凸から外し、電池部分が動かせるようにしておきます。

最後に、マザーボードを固定しているネジ2本を取り外します。
マザーボードを直接固定しているネジは上辺近くと下辺近くの各1本、計2本だけです。
最終的に、冷却ファンのネジ2本、無線LANモジュールのネジ1本、サブ基板のネジ2本と合わせて
計7本のネジが抜いてあるはずです。(画像3段目右)

また、念のため先ほど外したディスプレイケーブルが外れているか確認しておきます。



ヒートシンクの取り外し&清掃

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ヒートシンクはCPUとGPUで各4点、計8点のネジ留めとなっています。
ネジをすべて外すと、ヒートシンクを取り外せるようになります。
ヒートシンクはベース・ヒートパイプ・フィンの全てが銅製でした。(フィンは黒塗装)
CPU用のヒートパイプが少し長く、曲げ加工が荒っぽいような気がしますが、性能には十分期待できるでしょう。

ヒートシンクのベース部分には古くなった熱伝導グリスが固着しているので、まずこれを拭って除去します。
フィンに詰まったホコリの塊はまず拭って取り去り、仕上げにエアダスターで細かいホコリまで吹き飛ばします。
エアダスターを使うと簡単にかつよく取れますが、ホコリ・チリの飛散が深刻なので換気を良くして行いましょう。

今回のフィンの汚れは画像の通り・・・ここまでくると芸術的なレベルでした・・・
若干セメントのようなにおいがするので、もしかすると建設現場や化学工場で使われていたのかもしれません。
まあまず体に良いものではないでしょう。



■熱伝導グリスの塗りなおし&ヒートシンクの取り付け

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まず、CPUとGPUに固着した古いグリスを拭って除去します。
このとき、CPUやGPUのサブストレートに実装された部品をもがないように注意します。

古いグリスを取り除いたら、(アルコールを使った場合は乾いたのを確認して)新しいグリスを塗ります。
今回も Ainex・JP-DX1 を塗りました。公称16W/m・K。 ( 実際には10W/m・Kくらいという説がありますが・・・ )
ダイの中央に米粒大のグリスを載せて準備完了。

そしてグリスを押しつぶすようにヒートシンクを装着します。
途中でヒートシンクを持ち上げたり、横方向に動かしたりするとグリスが周辺に付着することがあります。
ヒートシンクのリテンショナーの足の部分には数字が刻んであるので、順番にネジ留めしていきます。
あまり傾かないように注意しながら締め込みます。特別に強く締めこむ必要はありません。



■ファンの清掃

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最後にファンの清掃をします。
ファンは形状が複雑で拭うことが困難なため、特にファンブレードの部分はエアダスター必須です。
ファンの排気口を安全な方向に向けて、吸気口からファンブレードの汚れている面に向かって
エアダスターを噴射します。するとファンが逆回転すると同時に大量のホコリ・チリを撒き散らします。

かなり大量のホコリ・チリが出ることが予想されるため、作業が済んだらすぐ立ち去りましょう。
ファンブレード以外の部分は最後に拭ってキレイにしておきましょう。



■組み立て

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ここまでの手順を逆に辿って組み立てます。
分解中に写真を撮っておくと参考になるので、ケーブルの配線やコネクタの位置・向きを撮っておくと良いでしょう。



■効果測定

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  ( 上段 : 清掃前、OCCT4.4.0 「PowerSupply」、気温23℃ )
  ( 下段 : 清掃後、OCCT4.4.0 「PowerSupply」、気温23℃ )

想像以上に効果が出ました!
より高いクロック数を、より低い温度で実現できています。もちろんBIOS設定は同じで、です。
これは低下していた冷却性能が元に戻ったことの証拠でしょう。分解清掃は大成功です。
ついでにアイドリング時のCPU温度やHDD温度も下がっているようです。

もともとこのマシンは吸気口の穴がデカすぎるうえ、フィルターもないのでホコリが溜まりやすいでしょうし、
負荷を掛けると100Wほどの消費電力を発揮するハイパワーぶりもあるので、清掃は重要だと思います。
とはいえ分解必須なので気軽にできることではないと思いますが・・・



■おまけ

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  ( 左 : マザーボードの印刷 )
  ( 右 : サブ基板の印刷 )

PCBには 「 HannStar J 」 と印刷されていました。
おそらくは 「 瀚宇博德科技(江陰)有限公司 」( Hannstar Board Technology (Jiangyin) Corp. ) のことと思われます。
台湾の財閥(?)のひとつ、「 華新麗華グループ 」( ウォルシン・リーワ ) に属する企業であり、
同グループの企業として、ほかに 「 瀚宇彩晶股分有限公司 」( HannStar Display Corp. )*6 などがあるそうです。

おもしろい記事を見つけたのでリンクを貼っておきます。
  ・ 『 Walsin Technology | 中卒くんが偉そうに世界経済について語るブログ

いやぁ・・・大きなグループですよねこれ。
東芝はかねてよりウォルシン・リーワやWinbondと各分野で提携していたようなので、
家族ぐるみならぬ ”グループぐるみの付き合い” だったのかもしれません。

  ・ 『 東芝:プレスリリース (1998.3.2)
  ・ 『 https://www.hannstar.com/Common.aspx?mid=30&tmid=1&modid=1

よく読んだら HannStar Display って 東芝の技術供与でできた会社だったんかーい!!!
”付き合い” どころじゃないですねこれは・・・ 後からひり出した3社連合・JDIとは一体・・・?


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  ← ボトムハウジング内面の刻印。

  ほかの内面に貼られている小さなシールは
  塗装会社に関するもののようでした。
  「 SUZHOU VENT 」 とのこと。

一方、ハウジングにはどこが作ったとも書かれておらず、「 TOSHIBA OME 」 くらいしか刻印されていませんでした。
まさか自社製造!? なわけはないでしょうし、たぶん書いてないだけでどこかの会社が作ったんでしょうけど・・・
個人的にはFOXCONNじゃないかと思ってます。Samsung・NP300E5Aと外装の加工がよく似ているので・・・ *7
また、WS754/Mのコネクタ類にはFOXCONNの刻印があります。


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  ← Embedded Controller。



実装されている部品を見てみると、SBDには日本インター(現・京セラ)のものが使われていました。
片方は20A品、もう片方は10A品でした。電源接続時が20A、バッテリー駆動時が10A、でしょうかね?
もしかすると両方同時に使うのかもしれませんが、このマシンは電源に接続しないと
フルパワーで動作しない設計となっています。*8

メインメモリとVRAMチップはいずれもSamsung製。メインメモリは「PC3L-12800S」とあるので低電圧対応型。
もともと搭載されていたHDD(500GB)は東芝製のMQ04ABF050。*9
仲良し企業グループの製品がてんこ盛り、という感じでしょうかね。となると液晶は? そこはまだ確認していません。
たぶん LG Display じゃないかと思うんですが・・・案外AUOやHannStarの可能性もあるかもしれません。*10





■撮影機材
Canon IXY DIGITAL 50
一部の写真は分解時ではなく組み立て時に撮影したものです。

*1:公式サポートページからACアダプターなどと同じ手順で注文できる。840円/個。そのうち買いたいものの、値段が値段なのでいつになるかは分からない。

*2:もしかするとバリエーションや個体によって本数や位置が異なるかもしれないので、最終確認は怠らないように。

*3:実際に千切りました(激怒) ただし千切れても特に問題はありません。

*4:ファンを持ち上げる前に抜いてもOK。ただし非常に扱いにくい位置にあるため、マザーボードやコネクタを破壊しないように注意が必要。ファン本体を持ち上げながら抜く場合は障害物が一つ減るのでラクラク

*5:DCジャックが接続されているマザーボード側のコネクタが非常に硬く、ハウジングに固定したまま外すことは難しい。LANコネクタはマザーボードの裏面に接続されているため、やはりハウジングに固定したままでは外せない。無理に抜こうとせずにマザーボードに繋いだままハウジングから分離させる方が良いと思う。

*6:参考⇒ https://jp.reuters.com/companies/6116.TW

*7:NP300E5AのハウジングにはFOXCONNの刻印がある。

*8:SBDの定格電流だけではなく、バッテリーへの負荷の関係もあるかもしれない。でもはっきりしたことはガチのエンジニアにしか分からないかも・・・。

*9:特に手を加えない限り、このマシンは7mm厚のHDD/SSDしか搭載できない模様。”MQ04ABFxxx”は7mm厚、”MQ04ABDxxx”は9.5mm厚。

*10:LGDとAUOは採用例がある。