UAP14475 のブログⅢ

Yahoo!ブログから引っ越してきました。パソコンとトイガンが大好物です。  暇になると艦これを始めてしまいます。とにかく秘書艦は阿武隈ちゃんで。

追悼・アビー株式会社 (PCパーツメーカー)

2018年12月18日、アビー株式会社が横浜地裁において破産手続き開始決定を受けた。
( 『 アビーが破産手続き開始。負債総額は約1.4億円 - エルミタージュ秋葉原 』 )



■Abeeについて

私が自作PCを実際に組み上げたのが2012年の12月で、
このときに組み込んだPSU(電源ユニット)が 「 Abee Supremer AS-1000B-SR 」 でした。
直販サイトのアウトレットに並んでいたモノですが、アウトレットという割りにキレイな印象を持ちました。
残念ながらこのPSUは2014年の12月に故障してしまい、今ではお蔵入りしています。

Supremer電源は容量的になかなか高性能で、ユニークな機能もいろいろ搭載していましたし、
何より、自分で選んだパーツで組み立てたパソコンで使い込んだ部品ですから、思い入れがあります。

・ ホームページ ・・・ http://abee.co.jp/index.php ( ※リンク切れ )
・ キャッシュ最終版 ・・・ https://web.archive.org/web/20181122174915/http://abee.co.jp:80/index.php



■Abeeの成り立ち

このAbeeという会社の成り立ちについて調べてみたところ、

① 「 星野金属工業 」 というPCパーツメーカーが存在した
② このメーカーの販売元として 「 ソルダム 」 ( 旧商号:株式会社星野精工 ) が存在した
③ このソルダムから独立した坂口氏が立ち上げた会社が 「 アビー株式会社 」

ということでした。
( 『 掲載誌情報 『インプレス DOS/V POWER REPORT 2004年9月号(7/29発売号)』: 』  )

ソルダム時代からアルミ筐体に力を入れていたようです。
PCケースはパフォーマンスにほとんど影響しないパーツではあるものの、
価格帯は広く数万円のものから数千円のものまであります。
中でもアルミ筐体は主に高価格帯に位置する部類の商品になります。

私はカネナシだったので0.6mmSECCでできた台湾製の安物OEMを採用しましたし、
アルミ筐体は本当に高価なものが多く、かなりこだわる人以外は買わないだろうという印象でした。
もちろん無駄に高いわけではなく、値段の分だけ高級感がある製品でしたけどね。



■その後のAbee

会社沿革 』 によれば、2006年1月にZUMAX社と販売業務提携し、
PSUの 「 ZU-400W 」 が後に市場シェアNo.1製品となったそうです。

ZUMAX社のページはコレ。

イメージ 1
 
( 『 Welcome to zumax Taiwan 』 、2019,01,02閲覧 )

よく見るとトップの画像に日本語が入っています。
また、台湾版のページではケーブルレイアウトの画像に日本語の解説が入っています。
どうして台湾のサイトなのに日本語なんでしょうねぇ・・・あっ(察し)
( 例 : http://zumaxpower.com/taiwan/product/ZU-G.html

同サイト内にて、ZUMAX社の沿革が以下のように紹介されています。 ( ※Google翻訳で翻訳したもの )
1995年:米国市場を皮切りに、電力製品に焦点を当てる
1997年:日本アビー株式会社の代理により、日本市場向けの電源製品の特定仕様を発表1998年:PCの冷却ファンを初めて使用した航空宇宙用自動潤滑ナノベアリングを長寿命、低騒音、80で発売 高温でオイルフリーの操作、洗浄することができる独占的な大量生産技術は、市場でセンセーションを引き起こし、すぐに日本でBCNのベスト製品賞を受賞しました。
2010年:台湾市場の顧客に根ざした台湾の公募会社Zhibao Optoelectronicsが紹介し、Zhibao Optical CircuitがZumaxに創造的な組み合わせを追加します。
2013年:Liguang Technology International Co.、Ltd.が台湾の総代理店となり、台湾に対してより広くより質の高いサービスを提供しています。” ( http://zumaxpower.com/taiwan/company.html より )

また、USA版のサイトにはZUMAXが坂口氏とともに紹介される画像が掲載されています。
http://zumaxpower.com/resource/review.htm


ほか、Abeeは3Dプリンタースマートフォン向けの製品などもリリースするようになります。
しかし・・・こう言っては何ですが、3Dプリンターは今のところあまり普及してませんし、
スマートフォン向けでも高価格帯のものが多いように思うので、それほど売れたかは・・・
もちろん実態の把握には統計が不可欠なので私には何とも言えません。


その後の2015年、Abeeは 「 REVSONIC株式会社 」 と業務資本提携を行います。
法人登記簿を見た限りでは新株発行によって提携を開始したように見えます。
( ※ 2015年6月23日に資本金が1,000万円から2,000万円に増加している ⇒ 株数が倍増した? )
https://web.archive.org/web/20150921172838/http://abee.co.jp:80/Corporate/pdf/20150701.pdf

しかし、このREVSONIC社は架空取引への関与の疑いや資金繰り悪化を原因として
業務資本提携から1年後の2016年に破産してしまいます。
( 『 REVSONIC(株) : 東京商工リサーチ 』 )

同時期にAbeeはREVSONIC社との業務資本提携を解消しています。



■Abeeを偲ぶ

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在りし日のSupremer電源。‎2012‎年‎9‎月‎23‎日撮影。

Abeeの社長・坂口氏は掲載誌情報 『インプレス DOS/V POWER REPORT 2004年9月号(7/29発売号)』:
取材において以下のように語っています。(以下、引用)

ソルダムを離れた理由はいろいろあるのですが、ハイエンドのPCを作りたかったのが大きな理由なんです。最近のPCは価格面が重視されるからなのか、とんがったPCが少なくなっているように感じています。確かに価格も大切なのは理解できるのですが、同じようなPCばかりかなと。自分は、一般的な家庭で使われるPCではなく、プロのミュージシャンやクリエイター、そしてハイエンドの自作ユーザーに使ってもらえるPCを作ろうと考えています。そのために、新しく”アビー”という会社を作りました。アビーはアルファベットで”Abee”というつづりになるのですが、このbeeはミツバチの意味なんです。ミツバチのように花の受粉の仲立ち、つまりクリエイターの方々の仲立ちができるようなPCを作りたいという思いをこめています」

しかし、現在の自作PC市場はますます縮小しているように思います。
人々の関心は自作のほぼ不可能なタブレットスマートフォンに向き、
残された自作PC市場には安価で高品質な海外製パーツが溢れかえっています。

そんな中ではAbeeのPCパーツ事業も少し苦しい部分があったのかなと思います。
スマートフォン向けの製品も廉価品ではありません。それにどちらも取り扱い店が少なかったような気がします。
3Dプリンターは個人で買うにはまだまだ高級品で、最近では話題に上ることも少なくなっています。


メールボックスを探っていたところ、こんなメールを発掘しました。
AbeeのサポートへSupremer電源の修理の可否を尋ねた際のものです。

イメージ 3
 
メールで返信があった時点(2016年4月19日)ですでに電源ユニットの事業はやめていた模様です。


PCパーツと縁遠くなってしまったAbeeへの関心は薄らいでいましたが、
それでも私はもう少しでもAbeeに生き残っていてほしかったと思います。
Abeeの製品の質は確かでしたし・・・

それにせっかくなら直販に売れ残っていた在庫を買っておきたかったです・・・
アルミ外装のモバイルバッテリーとか、まだ多少は残ってましたよね。
まあ全て手遅れなんですけどね・・・



■最後に

私には常々思うことがある。
この国の製造業はみな台湾や諸外国に消されてしまうのではないかと。
今の日本に入ってくる製品は安価で粗悪なものではなく、安価で高品質なものなのだ。
これでは日系企業は次々に駆逐され、この国の市場を制する企業はみな外資になってしまうだろう。

自由競争の原理に照らせばこのような流れも当然のことであり、
労働者は比較優位を持つ各種産業へ転身していくことが合理的であるだろう。
しかし、これまでずっとこの国で育んできた技術や知識、あるいは愛着は、
それほど容易に捨て去っていいものなのだろうか。

私の他の趣味でも、台湾を筆頭とする諸外国から安価で高品質な製品が続々と流入しており、
そのうち、というかすでに市場は台湾などの外国製品だらけになっている。

それが非合理的な産業を維持することだとしても、私はこの国の各種産業を守るべきだと思う。
きわめて単純かつ感情的な理由であるが、やはりこの国の企業がいなくなるのは寂しい。
企業の大小と問わず、なるべく多くの企業が生き残ってくれることを強く願いたい。


ちなみに、2017年に倒産した企業の平均寿命は23.5年であるという。
( 『 2017年「業歴30年以上の『老舗』企業倒産」調査 : 東京商工リサーチ 』 )

どこの国も基本そうだが、労働者のほとんどは中小企業に勤めている。
そのため、公務員や大企業の労働者を除けば「終身雇用」は維持されない可能性がある。

さらに、平成に入ってからは証券会社や銀行といった金融機関が廃業・破綻したり、
有名企業である東芝でさえ業績不振やそれに関連する問題を引き起こしている。
これから先の時代では、どんな大企業に入っても、どんな成長産業を選んでも、
何らかのリスクは必ずあるということを肝に銘じなくてはならない。





■追記 at 2019,01,02 21:02
ちなみに、REVSONIC社と坂口氏の持ち株比率は66.7%:33.3%でした。
所有と経営の分離」が見られないのは中小企業によくあることです。
( 『 会社概要 』、2016,08,02時点のキャッシュ )

■訂正 at 2019,01,02 23:41
Abeeの破産手続き開始決定の日付を10年間違えていたため訂正。