UAP14475 のブログⅢ

Yahoo!ブログから引っ越してきました。パソコンとトイガンが大好物です。  暇になると艦これを始めてしまいます。とにかく秘書艦は阿武隈ちゃんで。

ASGKの歴史 中間報告

まだ調べている途中で、根拠の整理も終わってませんがメモとして中間報告。
根拠の確認が終わっていない段階なのでご注意ください。



■業界団体の誕生

かつて、モデルガンがトイガンの主流であったころ、
その製造業者が集まり 「 日本モデルガン製造協同組合 」 が組織されていました。
その後、80年代にエアーガンが普及してくると 「 エアソフトガン協議会 」(略称ASGK) が誕生します。
このASGKは主に”蔵前筋”の各社で構成されていました。

日本モデルガン製造協同組合とエアソフトガン協議会が併合され、
日本遊戯銃協同組合 」(略称ASGK) が誕生、エアーガンの統一的な規制が実現します。
日本モデルガン製造協同組合の理事長であったマルシン工業が初代理事長に、
エアソフトガン協議会の理事長であったマルゼンが初代副理事長に、それぞれ就任します。

なお、業界団体誕生までの間にも各製造者からエアーガンが製造されており、
この期間に製造されたモデルにはASGK刻印がないものがいくつも存在します。
また、ロングセラー製品の中には、業界団体の誕生や移り変わりの中で威力が変化しているものもあります。



■CO2ガスガンの誕生

CO2ガスガン、といっても最初期のCO2というのは 「 グリーンガスシステム 」 と呼ばれる、
外部ソースの1種として開発され、エアータンクやR-12ガスの代わりに接続して使用するものでした。
これらを発売したのはマルゼン理事長時代であったとされています。
関連特許において、マルゼンとNTGが共同で出願人となっていることが確認できます。
当時はNTGなど炭酸ガス関連企業もASGK組合員となっていました。

マルシン工業の「ガスオペレーション」シリーズやモスバーグM500は、
グリーンガス・R-12両対応として、90年代のアームズマガジンに広告を載せています。
ほかにもMGCのマウンタ、コクサイのCO2リボルバー、などなど各社に普及した様子が伺えます。

しかし、R-12に比べて高圧なCO2を用いるガスガンを危惧する向きもありました。
アームズマガジンは全8回の特集を組んでマルゼンとCO2ガスガンを批判するなど、
ASGKの歴史の中での大きな事件でもあったのです。

なお、CO2ガスガンの中心的役割を担ったマルゼンなど4社は、
2018年現在でASGKには1社も残っていません。



アウトサイダーの出現

ASGKの壁の中で永遠平和が実現されるかと思われた90年代、
CO2ガスガンで揉める最中に 「 デジコン電子 」 がエアーガン(本体)事業に参入します。
M92Fをはじめ、MP5(これのみBV式)など、多数のエアーガンを発売しました。
ASGKの規制(当時0.20gまで)を破る重量を持つ 「 ストレイトBB 」(通称ピッカ弾) は、
エアーガン(本体)事業参入より前から販売しており、0.43gの大重量仕様もありました。

デジコン電子はASGKに加入しておらず、威力の自主規制を守る必要もなかったため、
箱出し状態でも高い威力を発揮、さらにM92Fでは命中精度や外観の出来も評価されていました。
ただし、マガジンが高い(M92F)、WA製品との競合(M92F)、直後のマグナ・ブローバック誕生、
などなど問題点も存在しました。

ASGKに加入していないデジコン電子に対し、ASGKは販売店への取り扱い中止を要請しますが、
これを独占禁止法違反として1993年にデジコン電子から訴えられてしまい(=「デジコン訴訟」)、
1997年にマルゼンは1,800万円の賠償命令を受け和解、損害賠償を行うこととなります。
損害賠償額1,800万円のうち、半分を協会が、半分をマルゼンが支払いました。
なお、当初のデジコン電子の賠償請求額は7,300万円でした。



■マグナ・ブローバックの誕生とJASGの誕生

1992年、WAは 「 スーパーリアルブローバック 」 と称する新機構を搭載したM92FSを発売。
これが後の 「 マグナ・ブローバック 」 であり、初のプレシュート・1wayブローバックを実現しました。

この”マグナ”は、これ以前のプレシュート・2wayブローバック(マルシン・ガスオペレーション)や、
アフターシュート・1wayブローバックなどに比べ、よりリアルな構造と高い命中精度を実現するもので、
まさに”革新的な機構”となっていました。

この新機構は当然ながらWAの特許技術でしたが、発売後に各社が類似品を開発・採用、
これに対してWAは複数の訴訟を起こし(=「マグナ訴訟」)、ASGK組合員同士での争いが勃発してしまいます。
マルゼンはこの訴訟に負け、デジコン訴訟に続いてまたも損害賠償を行うこととなってしまいます。

なお、エアーガンの機構に関して特許を出願すること自体は古くから行われており、
ポンプ内蔵カート式エアーガン、フィックスドガスガン、BV式ガスガン、さらにはブースターまで、
さまざまな機構が特許として保護され、特許回避によって各社のエンジンに違いが存在していました。
しかし、実際に訴訟にまで至ったのはおそらくマグナのみです。
ただ、そうしてまで守ろうと思えるほど、マグナは大きな発明であったといえます。

ただし、マグナには”エキストラクターがライブに出来ない”といった細かな欠点があり、
マルシン・DualMaxiは、先代のガスオペレーションではライブであったエキストラクターがダミーになり、
また、M1ガーランドでは1段引きトリガーに改良されたプレシュート・2wayブローバックが採用されています。


このマグナをめぐるASGK内での争いに業を煮やした一部メーカーは、
日本エアースポーツガン振興協同組合 」 および 「 日本エアースポーツガン協会 」(略称JASG) を設立、
新たな業界団体が誕生すると同時に、ASGKの0.4J規制とJASGの0.8J規制が並存することとなりました。

JASGの組合員は分かっているだけでも以下の4社があげられます。
・ マルゼン
・ KSC (※MGCASGK
・ ハドソン産業 【のち滅亡】
・ 国際産業(コクサイ) 【のち滅亡】

JASGの初代理事長は国際産業で、所在地も当初は国際産業と同じ場所でしたが、
のちにマルゼンが理事長と所在地を担うこととなりました。



■東西玩具銃部品製造協同組合(GPMC)の興亡

2002年、シェリフを主軸とした一部パーツメーカーなどが
東西玩具銃部品製造協同組合 」(略称GPMC)を立ち上げます。
この業界団体のみ、ハンドガンのメタル外装を一部容認しているという特徴を持ちます。

しかし、2003年1月20日に組合員であった「むげん」の社長と社員が
マグナムショップむげん東京本店にて、プラスティック製エアガンを改造した
金属製のモデルガン15挺を展示し、模造拳銃販売の疑いで逮捕されてしまいます。

こののち、「むげん」はGPMCを自主退会、GPMC自身の活動も不活発なものでした。
また、数年後には理事長シェリフが防犯用品開発の費用肥大化により事業譲渡ののち解散します。
結果としてGPMCは目立たないまま消えてしまいましたが、
メタル外装の普及に関与した団体として歴史に残る存在だと思います。

2014年、近畿経済産業局長の命令によりGPMCは解散してしまいます。



■準空気銃の創設とSTGAの誕生

2000年~2005年は高威力・高精度・長射程の3つが揃った、ある意味では最盛期といえる時期でした。
しかし、カスタムパーツによる際限のない高威力化は、2000年にはとうとう犠牲者を出す事件に使用され、
2005年には自動車に対して発砲する事件が連発、エアーガンは規制を受けることとなりました。

当時、高威力カスタム(※本来は高精度のためのカスタム)を行っていたのが、
APS専門の4D、デジコン専門のケリー(旧ケリーカスタム)、といったところで、
さまざまな高威力カスタムとそのパーツが出回っていました。
調べてみると大御所のファースト大阪本店も逮捕者を出していることが分かります。
また、隣国・台湾のエアーガン産業が発展しており、その製品の一部が流入していたと思われます。

かくして、一部の高威力エアーガン(3.5J/cm2~20J/cm2)は改正銃刀法によって
「準空気銃」と規定され、規制されることとなりました。


このとき、マルシン工業は自社の独自規格8mmBB弾の扱いを不服として、
一部のメーカーとともに 「 全日本トイガン安全協会 」(略称STGA) を設立しました。
これによって(本体メーカーの)業界団体は、ASGKJASG、STGA の3つに分裂してしまいます。

STGAに加入している(いた)主なメーカーは以下のとおりです。
マルシン工業
・ ファルコン・トーイ(FTC) 【のち滅亡】
タニオ・コバ

なお、STGAは華山のダブルバレルショットガンなどの一部海外製品の認証も行っているほか、
威力に関しては銃刀法の規制(3.5J/cm2)を守るように呼びかけているのみ、となっています。

ASGK⇒STGAの移行期にあたる2005年から(仕様変更を受けつつ)販売されている、
マルシン・M1ガーランド (MAXI/maxi8/6mm) には、
ASGK刻印、刻印削り取り、無刻印(STGA期) の3種が存在します。
また、MAXI⇒maxi8のモデルチェンジは、新たな改造防止策「スペリアルバレル」の導入によるもので、
フルサイズ(=タンカーでない)の「MAXI」には、新規制対応のための改造が施されました。
M1ガーランドは、この一大事のちょうどど真ん中に誕生したモデルといえます。



■CO2ガスガンの復興

ASGKから離脱したマルシン工業は、「 CDXカートリッジ 」 と称する専用小型ガスボンベを用い、
このガスボンベをマガジンもしくは本体に挿入することでガスを充填する、CO2ガスガンを発売します。
最初期には台湾製のガスガンが輸入販売され、自社製の Five-seveN、M1カービンCDX も発売されました。
2018年にはM1カービンEXB2が発売、レイジング・ブルは現在発売待ち、となっています。

この新型CO2ガスガンはマルシン工業の特許で固められているため、
そう普及していくものではないと思われますが、革新的な製品であることは間違いないでしょう。
また、HFC-134aがCFC-12に続いて規制対象となったことも追い風要因になるはずです。
ただし、個人での分解修理がほとんど不可能という問題はあります。

新型となり、改造が物理的にも法的にも難しくなった現在、”CO2ガスガンは安全”と言っても
良いのではないかと思われますが、残念ながらCO2ガスガンの是非は未だに割れており、
それはエアーガンの長い”悪用の歴史”によるところが大きいようです。

個人的な意見ですが、もうひとつの代替策である「ノンフロン・ガンパワー」(HFO-1234ze+LPG)は、
東京マルイの特許商品ですので、東京マルイへの対抗策としてもCO2を応援したいところです。
ガスもタマも銃もマルイなんて・・・



☆コラム : 蔵前筋

「蔵前筋」とは、マルゼン、ファルコン・トーイ、などの数社を指します。

ファルコン・トーイ(FTC)はオモチャ的な製品をよく発売していましたが、
GALILシリーズあたりからある程度のリアリティを持たせるようになり、
MP5シリーズや56式小銃・AK-47Sといった製品では高いリアリティを実現しました。
これらはいずれもBV式ガスガンで、低燃費かつ高精度と好評でした。(威力は控えめ)

FTCは1957年創業で当時の商号は「日新産業」でした。
1985年に新商号「ファルコン・トーイ」へ変更、その商号とロゴは同社製品「ファルコン」に因みます。
これは下請けだった日新産業が、自社で製品を売り出していくにあたって変更したとのことです。
1993年に株式会社形態から有限会社形態に変更、ちょうどそのころに電動ガンMP5を発売します。
その後の活動はよく分かっていませんが、2006年に会社を解散しました。

FTCの解散により、マルゼンは”蔵前筋最後の生き残り”となりました。
マルゼンでさえ”活発”とは言えない状態ですが、マルゼンにはAPSやM1100があります。
リアリティと実射性能、あるいはリアリティとアクション性が両立されて当然となった今、
その要求に応えることは容易ではありません。そういう点でマルゼンは生き残れたのではないでしょうか。
それに、マルゼンは有限会社ですから業績によらず営業していくことが可能ですし・・・



☆コラム : 各業界団体の”エアーガン”の呼び方

3つの各業界団体はそれぞれ”エアーガン”の呼び方を持っています。
ASGK : エアーソフトガン / AIR SOFT GUN (商標)
JASG : エアースポーツガン / AIR SPORTS GUN
・ STGA : エアーガン

また、日本モデルガン製造協同組合時代には 「 エアセフティガン 」 なる呼び方も見受けられます。
STGAの「エアーガン」を除けばいずれも「ASG」であり、雑誌においてはASGと書かれることもあります。
これら以外にもエアーガンに関連する商標がいくつかあるようです。



私見ASGKとエアーガンのこれから ○

ASGKの長い歴史は、”ASGK衰退の歴史”でもありました。
かつてASGKは30以上の組合員を抱える唯一の業界団体だったはずですが、
2017年4月時点では11にまで組合員を減らし、多くの社がこの業界を去りました。

国内における多くの危機、そして脅威に遭遇してきたASGKトイガン業界ですが、
今となっては”海外の脅威”が加わり、まさに熾烈な生存競争となることが考えられます。
安価で高品質、そんな魅力的なエアーガンがまさに今も、海の向こうから運び込まれ続けています。
果たして、国内エアーガン産業はどうなってしまうのか、私は強い危機感を感じています。





■編集後記

GPMCの話は載せなくてもいいと思ったんですが、一応調べたので載せました。
ハーフメタルはおろかフルメタルでさえヤフオクでいつでも買える現代、
GPMCがまだ存在していたら、どう思うんでしょうね。

時代の節々で去っていったメーカーや、新規制に反発した人々など、
業界団体の変遷から大きく外れたところにまで目を向けることで、
真の”トイガン考古学”が達成できます。・・・が、それには膨大な資料の精査が必要でしょう(涙)

いくつかの事象やメーカー話には法人登記簿や各雑誌のメーカー欄が役立ちます。
ファルコン・トーイの節はアームズマガジンにおけるFTC自身の回想が出典で、
各事象の正確な年(月日)は法人登記簿から調べています。