”格安SIM” として多くのサービスが誕生したMVNO(仮想移動体通信事業者)業界。
私はそろそろこの業界にも再編の兆しがあるような気がしています。
MVNOとは、VNOと呼ばれる大手キャリア(docomo、au、SoftBank)から回線を借ることで、
自前の通信設備を用意せずにサービスを提供するプロバイダーです。
一番の特徴はその価格で、それまでの携帯電話料金に比べて非常に低く設定されていました。
”格安SIM” と呼ばれる理由はここにあります。
低価格化にはいくつかの仕掛けがあり、例えば実店舗を設けないことによってコストカットを図る、
回線速度・通信容量を低く抑える、スマートフォン本体を別売にする、などがありました。
特に、スマートフォン本体を別売にしたことで、大手キャリアでは見られなかったSIMカードのみの販売を実現し、
すでに本体を持っていて、かつデータ通信をあまり使用しないライトユーザーには大きな利点でした。
しかし、docomoは「OCN モバイル ONE」、auは「UQ mobile」、SoftBankは「Y!mobile」を展開し、
実質的には大手キャリアと同一の企業がMVNOに参入しています。
問題はMVNOの各種サービスと大手キャリアが結局は同じ回線を使っているという点で、
同じ値段・通信容量なら、大手キャリアでないMVNOより、大手キャリアのMVNOの方が速い場合が多く、
そのうえサービスの性格上、差別化が難しいため独自色を出しにくくなっています。
私は将来的に、大手キャリアとそのMVNOが再びシェアの大半を取り戻し、
大手キャリアでないMVNOは囲い込み戦略にシフトして、他の自社サービスとの併用を促す、と予想します。
大手キャリアでないMVNOがサービスそのものの差別化は難しいので、
例えばSNSや固定回線といった他のサービスと併用で割引を適用できるようにしたり、
特典を受けられるようにすることで、自社サービスをセットで利用してもらい、
これによって、大手キャリアとの価格競争で薄れた利幅でも採算が合うようにします。
ただし、すでに自社のいずれかのサービス利用者に対しては囲い込みが効くものの、
どのサービスも利用していない人にとっては、いくつものサービスを利用して初めて安くなる、というのは
敷居が高く感じられてしまい、かえって新規加入者を減らしてしまう可能性があります。
つまりは先細りになりかねません。
ということで、最終的には大手キャリアとそのMVNO以外は絶滅する可能性もあると思います。
あるいは、自社で回線を引き、第四・第五の大手キャリアとして競争するのもあるかもしれません。
楽天モバイルは実際にこの戦略であるようですが、相手はすでに何年もサービスを提供していて、
回線事業者として重要な信頼性を持ち、事業のノウハウを大量に蓄積しています。
この戦略でも競争は苛烈なものとなるでしょう。
0SIMは珍しく差別化に成功した例だと思ってましたが、サービス終了しちゃいましたしね・・・(追悼)